文明の転換は、地図の転換

個人、地域、社会、そして文明によって、共有されている“地図”はそれぞれに独特です。

狩猟採集文明では、人間は足もとの大地を移動し、動物を狩ったり、木の実をとったり-つまり、足もとの生態系(ランドスケープ)から直接的に食べ物を得て暮らしていました。おそらく彼らの“地図”は、足もとの生態系(ランドスケープ)そのものだったに違いありません。

農業文明では、土地の所有と権力のあり方が重要視され、彼らの“地図”は土地の所有・管理区分、すなわち行政・組織・個人など人によって区画されたものになっていきました。

そして今日の産業文明では、動力を駆使して大量生産を行い、多様な輸送手段によってそれを世界中に分配できるようになり、私たちの“地図”には土地の所有・管理区分に加えて、交通が中心に位置するようになりました。さらにITの発達によって、必要な物資や情報はパソコンに座れば調達できる時代になれば、私たちの“地図”は、行政区画も交通もない、抽象的なものになってしまうかもしれません。

文明がどうあれ、地球環境危機は地球の生態系(ランドスケープ)の構造が原因で発生します。環境文明への転換を図るためには、私たちは、流域のような生態系(ランドスケープ)の構造が入った“地図”を共有することが必要でしょう。

“行政・交通中心の地図”しか共有しない産業文明では、生態系(ランドスケープ)としての地球の制約・限界や可能性に配慮する感性に欠けていました。地球と再適応する暮らしを実践する地域の枠組みを行政区画で考えることは、産業文明の延長線上でしかありません。環境文明への転換は、共有する地図の転換、足もとで行動する地域の枠組みの転換、と考えています。

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